虚血性心疾患
原因・病態
冠状動脈が何らかの原因によって狭窄あるいは閉塞し、胸痛などの症状が出現する状態。
○狭心症(AP:angina pectoris)心筋障害が一過性で心筋壊死を残さない
○心筋梗塞(MI:myocardial infarction):心筋障害が進行して一部は非可逆的な心筋壊死が生じた状態
安定冠状動脈疾患(sCAD:stable coronary artery disease)
労作性狭心症
原因・病態
動脈硬化などで冠状動脈の内腔に狭窄が存在し、運動などにより心筋の酸素消費量が供給量より多くなり虚血状態となり、胸痛などの症状が出現する状態。
休息すると胸痛が改善される。
ニトログリセリンの舌下投与によって数分で回復する。
検査
- 標準12誘導心電図
- トレッドミル試験
- 核医学検査
- ホルター心電図
- 心エコー法
- 心臓カテーテル法(冠状動脈造影(CAG)、左室造影(LVG))
- 冠状動脈CT
- 磁気共鳴血管造影(MRA、MRI)
分類
カナダ心臓血管学会(CCS)分類
重症度 | 特徴 |
1度 | 歩いたり、階段を昇ったりするような通常の労作では狭心症は起こらない。激しい長時間にわたる運動により狭心症が出現する |
2度 | 日常生活ではわずかな制限がある。①急いで歩く、②急いで階段を昇る、③坂道を昇る、④食後、寒い日、風の日、イライラしたときの歩行、階段(昇) |
3度 | 日常生活の著名な制限がある。70m〜200m程度歩いただけでも狭心症が生じ、1階分の階段を昇ると狭心症が生じる |
4度 | どのような肉体的活動でも狭心症が起こる。安静時に胸痛があることもある |
治療
- 危険因子の是正(高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満、糖尿病など)
- 薬物療法(硝酸薬、β遮断薬、カルシウム拮抗薬、抗血小板薬)
- 経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)
- 冠状動脈バイパス術(CABG)
冠れん縮性狭心症
冠状動脈にれん縮(スパスム spasm)が生じて、血流が途絶えて狭心発作を生じる。
治療
- 薬物療法(カルシウム拮抗薬)
急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)
不安定狭心症(UA:unstable angina)
特徴
①安静時に症状がおこって通常10分以上持続する
②症状が重篤である
③新規発症である
④症状が徐々に増悪する
※全て当てはまるわけではない。
分類
ブラウンワルド分類
重症度-臨床状況、治療状況 と評価する。
例)クラスⅡ-A2
○重症度(Ⅰ〜Ⅲ)
クラス | 特徴 |
Ⅰ:新規、重症、または増悪型狭心症 | ・最近2ヶ月以内に発症した重症の初発労作性狭心症 ・1日に3回以上発作が頻発するか、わずかな労作によっても発作がおこる増悪型労作狭心症 ・安静狭心症はみとめない |
Ⅱ:安静狭心症(亜急性) | ・最近1ヶ月以内に発症した安静狭心症で、48時間以内に発作をみとめない |
Ⅲ:安静狭心症(急性) | ・48時間以内に安静時発作をみとめる |
○臨床状況(A〜C)
クラス | 特徴 |
A:二次性不安定狭心症 | ・貧血、発熱、低血圧、頻脈などの心外因子により出現するもの |
B:一次性不安定狭心症 | ・クラスAに示す心外因子なし |
C:梗塞後不安定狭心症 | ・心筋梗塞発症後2週間以内 |
○治療状況(1〜3)
クラス | 特徴 |
1 | ・未治療もしくは最小限の狭心症治療中 |
2 | ・一般的な安定狭心症の治療中 |
3 | ・ニトログリセリン静注を含む最大限の抗狭心症薬による治療中 |
治療
- 安静+心電図モニター装着
- 薬物療法(硝酸薬、β遮断薬、抗血小板薬、ヘパリン)
- 経皮的冠状動脈インターベンション(PCI)
- 冠状動脈バイパス術(CABG)
急性心筋梗塞(AMI:acute myocardial infarction)
原因・病態
冠状動脈でアテローム性プラークの破綻により血栓を生じ、内腔が完全に閉鎖して血流が途絶し、急速に心筋が壊死する状態。
血液検査にて心臓マーカーの値が上昇する。
※心臓マーカー:クレアチンキナーゼ(CK)、CKのサブタイプのCKMB、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、乳酸脱水素酵素(LDH)、心筋トロポニンT(cTnT)
分類
○発症時間による分類
・急性心筋梗塞:発症後72時間以内
・亜急性心筋梗塞:発症後72時間〜30日
・陳旧性心筋梗塞:発症後30日以降
○心電図のST変化による分類
・ST上昇型心筋梗塞:貫壁性梗塞、Q波心筋梗塞とも。
・非ST上昇型心筋梗塞:心内膜下梗塞(非貫壁性梗塞)、非Q波心筋梗塞とも。
合併症
- 不整脈
- 心不全
- 心原性ショック
- 心破裂、乳頭筋不全
- 心膜炎
- 心室瘤
治療
★発作後6時間以内の冠血行再建術(PCI・CABG)が大きな効果を示す。
関連図

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