膵炎(pancreatitis)
目次
急性膵炎(acte pancreatitis)
原因・病態
アルコールの多飲や胆石など様々な原因によって膵酵素が膵内で活性化し、組織を自己消化することで浮腫・壊死・出血が生じる状態。
主な症状
- 激烈な上腹部痛
- 心窩部または左季肋部の持続的な激痛→背部・左肩に放散
- 嘔吐
- 心窩部から左肋骨弓に沿った知覚過敏(ヘッドの過敏帯)
- 腹部膨満(麻痺性イレウス・腹水を合併した場合)
- カレン徴候(臍周囲の皮下の斑状出血)
- グレイ-ターナー徴候(側腹壁が皮下出血によって青く変色)
重症度
厚生労働省急性膵炎重症度判定基準(2008)
- Base excess≦-3mEq/L,またはショック(収縮期血圧≦80mmHg)
- PaO2≦60mmHgまたは呼吸不全
- BUN≧40mg/dl(またはCr≧2.0mg/dl)または乏尿
- LDHが基準値上限の2倍以上
- 血小板数≦10万/mm3
- 総Ca値≦7.5mg/dl
- CRP≧15mg/dl
- SIRS診断基準における陽性項目数≧3
- 年齢70歳以上
各1点、発症後48時間以内に判定、3点以上で重症
※SIRS診断基準
①体温>38度 または 体温<36度
②脈拍>90回/分
③呼吸数>20回/分 または PaCO2<32Torr
④白血球数>12,000/mm3 または 白血球数<4,000/mm3 または 10%幼若球出現
造影CTグレード
Ⅰ.炎症の膵外進展度
前腎傍腔 | 0点 |
結腸間膜根部 | 1点 |
腎下極以遠 | 2点 |
Ⅱ.膵の造影不良域(膵頭部、膵体部、膵尾部に分ける)
各区域に限局している場合、または膵の周辺のみの場合 | 0点 |
2つの区域にかかる場合 | 1点 |
2つの区域全体をしめる、またはそれ以上の場合 | 2点 |
Ⅰ + Ⅱ が2点以上で重症
治療
- 膵外分泌の抑制
- 薬物療法(抗コリン薬、非ステロイド性鎮痛薬、非麻薬性鎮痛薬)
- 合併症・二次感染の防止
- 輸液
- 禁食 → 脂肪制限食
- 外科的手術
慢性膵炎
原因・病態
膵臓の内部に不規則な線維化、細胞浸潤、実質の脱落、肉芽組織などの慢性変化が生じ、膵臓の外分泌と内分泌機能が低下した状態。
原因の約60%がアルコールの多飲。
①代償期:膵炎発作を繰り返すが膵機能が保たれている
②非代償期:膵機能の低下によって症状が出現している
主な症状
無症候性、無痛なこともある。
- 腹痛
- 腹部圧痛
- 心窩部痛
- 嘔吐
- 食欲不振
- 下痢
治療
代償期 → 急性膵炎の治療に準じる
- 原因の除去
- 食事療法(糖質中心の低脂肪食(15g〜30g/日以下)、断酒)
- 中心静脈栄養
- 疼痛対策の薬物治療(抗コリン薬、非麻薬性鎮痛薬)
- 内外分泌機能低下に対する補填
- 外科的治療
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