「好きなのに苦しい」気持ちの正体は?アンビバレンスという感情のもつれと向き合う方法

目次
その「好きなのにしんどい」は、あなただけじゃない
「大切な人のことが、好き。でも…なぜか苦しい。」
そんな気持ちになったこと、ありませんか?
心配してくれる親やパートナー、仲良しのはずの友達との間に、ふとわきあがるイライラやモヤモヤ。
「好き」と「つらい」が同時に存在してしまう、その複雑さに戸惑う瞬間――。
実は、私自身も看護師としてたくさんの「人の気持ち」と向き合ってきましたが、
この“好きなのにつらい”という感情のもつれは、子どもから大人まで、どの年代にも見られるものでした。
今回は、そんな「感情のねじれ=アンビバレンス」に焦点を当てた、エチオピア文学の分析を紹介しながら、
私たちの日常の人間関係にどう向き合えばいいのか、やさしく考えていきます。
アンビバレンスは“おかしい感情”じゃない。むしろ自然な心の動き
結論から言えば――
「相反する感情を同時に持つ」のは、まったく自然なことです。
エチオピア小説の登場人物たちは、「愛しているけれど恨めしい」「感謝しているけど怒っている」など、
矛盾した感情に揺れながら、自分と他者との関係を模索していきます。
精神分析の視点からは、こうしたアンビバレンスは“心の成長過程”としても重要な意味を持っています。
アンビバレンスって、どんな感情?~物語と脳・心理から読み解く~
🌱アンビバレンスとは?
アンビバレンス(ambivalence)は「相反する感情が同時に存在すること」。
例えば…
- 「好きだけど距離を置きたい」
- 「ありがとう、でも許せない」
- 「会いたいけど、怖い」
これらの矛盾した感情は、葛藤や疲労を招くこともありますが、実はそれだけ“本音”が複雑で深いという証でもあります。
📚文学作品に描かれるアンビバレンス(『Yäqënat Zār』『Emba ɨnna Saq』)
エチオピアの小説では、登場人物たちが「後悔」「怒り」「悲しみ」「愛情」といった感情を同時に抱え、
大切な人との関係で苦しみながらも、心の真実を模索していきます。
特に印象的なのが、こんなシーン:
「私はあの人を憎んでいた…でも、それ以上に、そばにいてほしかった」
「母を赦したい。でも、苦しかった気持ちも嘘じゃない…」
こうした言葉は、看護や保育・教育の現場で接する“人の複雑な感情”そのものだと、私は感じます。
🧠心理学・脳科学的にも「ふつう」のこと
精神分析では、アンビバレンスは心の深い働きのひとつ。
- フロイトは「喪失と愛着が心の葛藤を生む」とし、
- メラニー・クラインは「子どもが母親に感じる“愛と怒り”が共にあること」が心の発達の基礎になると述べました。
脳科学的にも、感情の司令塔「前頭前野」と、「恐れ」や「報酬」に関係する脳部位が同時に働くことで、
“好きなのに拒否したい”といった複雑な反応が起きることがわかっています。
揺れる気持ちは、否定しなくていい
📝今日からできる「アンビバレンスとの付き合い方」はこちら:
「両方あってOK」と認める
→「嫌いな部分があるからって、全否定しなくていい」
→「好きだけどつらい」という感情は“あなたが悪いから”ではありません。
モヤモヤは“紙に書く”だけでも違う
→感情の名前をつけたり、文章にすることで、少し客観視できるようになります。
私も仕事で人間関係に疲れたとき、「うれしい」と「悲しい」を両方書き出してみたら、
「どちらも自分の本音なんだ」と認められて、少し楽になりました。
まとめ
🧵この記事のまとめ
- アンビバレンス=「矛盾した気持ち」は“ふつうの感情”
- エチオピア小説にも描かれる、愛と怒りの共存
- 心の発達や関係性の中で、誰にでも起こりうる現象
- 否定せず「両方あること」を認めることが癒しへの第一歩
💬いちばん伝えたいのは、
「その複雑な感情を持つあなたは、ちゃんと心が動いている証拠」だということです。
「完璧じゃなくていい」「揺れる心も大切な自分」と、やさしく自分に声をかけてあげてくださいね。
📚参考・出典
- Dibekulu, D., Dagnew, T., & G/Meskel, T. (2025). Exploring ambivalence: A psychoanalytic analysis of emotional complexity in selected Amharic novels. PLOS ONE. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0327631
- Freud, S. (1917). Mourning and Melancholia.
- Klein, M. (1940). Mourning and its Relation to Manic-Depressive States.
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